「NINE」
この作品を、ある映画監督の再生物語として片づけてしまうには、あまりにもったいない。
単純なようでいて、入り組んだエピソードの数々。それにモノクロ画面の妙、照明の巧みさが折り重なっていく。
フェリーニの香りがし、トリュフォーの「アメリカの夜」も思い起こさせた。
しかし、それらと一線を画すのは、本作がミュージカルであるということ。
ミュージカルと言えば、フレッド・アステアやジーン・ケリーの昔から、舞踏の場面を競って三次元化させることを競っていた。
今は、違う。
ロブ・マーシャル監督は、「シカゴ」でも舞台のような二次元化をあえて試みようとした。今回はそれをさらに進化させたと言える。実はマイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」でも同様の試みがされていると、私には感じられてならない。
それはともかく、ミュージカルにリアリズムを求めようとする現代の志向が、そうさせるのだろうか。つまり、ダンスシーンを登場人物の内面的思索の具象化であると位置付けたいのか。
いや、むしろバーチャルと現実の見分けが困難な観客に対しての配慮からなのか。
考えさせられる作品であることには違いない。
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