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映画「はやぶさ 遥かなる帰還」

この映画に、ちょっと面白いお菓子が出てくる。
かりんとうである。

今はもう食べなくなったなぁ、このかりんとう。
ゴツゴツした外観は、無骨そのもの。
「自分、不器用ですから…」
誰かのせりふじゃないけれど、お菓子の世界では、きっと順風満帆に生きてきたんじゃないことが、容易にうかがい知れる。

かりんとうはまた、宇宙空間に浮かぶ小惑星「イトカワ」をもイメージさせる。
孤独な影を宿す。

さて、映画は巧みな人物配置。
新聞記者を語り手とすることで、素人にもわかるように語られている。またそれが物語進行を単調さから救っている。

神仏に頼らない山口教授が、願掛けにいった先で、孫受け先の社長と語り合うシーンの、その社長の指先の演出などは、失礼ながら東映にしては珍しくさらりとしたタッチである。
そう、東映としてはめずらしく、まっすぐな映画なのだ。

ペンシルロケット、カッパロケット…なつかしい。
日本がロケットを打ち上げる意味を分からせてくれた。

噛み砕くと、口中がとんでもない騒ぎになるが、そこが味わいだ。さまざまな人間ドラマがぜいたくに盛り込まれている。
混乱の中に秩序が生まれ、やがてほのかな甘みが残る。あきらめなかった者だけが味わえる豊かさだ。

そんな、かりんとうのような作品であった。

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