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平成24年度 学校法人永井学園 鹿島学園高等学校奈良キャンパス 入学式 学校長式辞

新入生の皆さん、入学おめでとう。
保護者の皆様、本日はお子様のご入学、まことにおめでとうございます。

さて、皆さんは何のためにこの学園に入学したのですか?
専門学校の諸君は、専門分野の知識や技術を学ぶため。高等学校の諸君は、基礎的な学力の上へさらにより高度な知識を身につけるため。
 …などなど、いや、ごもっとも。しごく当然ですね。
学校は勉強するところ。その通り。いわば知性を高める場所と言ってもいいでしょうね。

では、その知性とは何のためにあるのでしょうか?

実は先日、私はこんな経験をしました。
映画「アーティスト」を観たのです。
モノクロ作品で、しかもサイレント映画です。数々のアカデミー賞に輝いた作品ですから、知っている人も多いことでしょう。

モノクロですから、画面は白黒。
サイレントですから、セリフは聞こえない。必要最低限のセリフが字幕として画面の端っこに浮かび上がるだけ。

にもかかわらず、この作品は世界の人々を魅了しました。
いいですか、もう一度、言います。この作品は世界の人々の心を動かしたのです。
ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、それはこの映画がカラーではなかったからです。音声がなかったからだと、私は思っています。

観る人が、自分の経験や経験を総動員して、そこに自分だけの色を、そして音声をフィルムにかぶせていったからではないでしょうか。

つまり、観る人の知性や経験が、この作品の完成度を高めたのだと言えます。

話が抽象的ですか?

では、ミロのヴィーナスを例にとりましょう。
もし、あれがマネキンのようにリアルに色が塗られていたとしたらどうでしょう?
墨絵に色が塗られていたとしたら?
そして、マンガがアニメ化されたときに感じる自分の中のイメージと声優の声とのギャップは、どこからくるのか。
ほら、答えはおのずと出てきますね。

「制約されたところにこそ、芸術は生じる」
そう、人は表現を受け取る時に自分の知性と経験を総動員して理解していくのです。そこに感動が生まれるのです。
時に誤解も生じますがね。

でも、それが生きることです。
それが、人生を楽しむことだと、私は思っています。

皆さんは、この学園の中と外で、ぜひ自分自身の知性と経験を高めていってください。
そして、生きていくための力にさらに磨きをかけてください。

私たちは、そのお手伝いをすることを約束しましょう。

皆さんのこれから長く続くであろう、楽しき人生のために。

入学、おめでとう。

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